不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 最終更新日:2018年10月11日
  • 公開日:2018年10月9日

ZUU一村明博氏に聞く、不動産業界が10年遅れでも金融業界から学ぶべきIT化と自己改革とは(上)

「取引価格の3%プラス6万円」などを上限価格と定められている仲介手数料を不動産業者のほとんどが満額受領する中、不動産流通システム(REDS)は「半額から最大無料」を掲げていることは当サイトでたびたび説明している。それは他業者と価格面で差別化を図るだけでなく、業者が情報面での優位性を利用して顧客の利益を損なうことで利益を得るというビジネスモデルを打ち破り、真に顧客本位のサービスを提供したいという理念が込められている。ただ、不動産業界は全体に非常に保守的で、手数料率の自由化やIT化で新たな価値を生み出したり業務を効率化したりする「不動産テック」はなかなか進んでいかないのが現状だ。

 

一方、金融業界は1999年に金融ビッグバンの柱のひとつとして株式売買委託手数料が自由化され、2000年代にはフィンテックと呼ばれるIT化が始まっている。手数料自由化によって、手数料率の平均は自由化前の99年3月期の0.42%から、2012年3月期は0.06%に下がり、手数料総額は半減したとの試算もある。証券業界には痛みを伴う改革ともなったが、ネット取引は拡大し、顧客本位のサービス提供は拡大してきたといえる。

 

なぜ金融業界が10年以上前にできたことが不動産業界には難しいのか。一連のフィンテック化の流れを業界のど真ん中で見てきた、株式会社ZUUの取締役、一村明博氏に話を聞いた。

 

ZUU一村

一村 明博氏

 

営業一色から営業なしの会社へ

 

――まずバックグラウンドからお願いします

 

一村 1993年に大和証券さんに新卒で入社し、支店に配属になって、いわゆるリテール業務をやっていました。中小企業のオーナーをはじめとする一般の人よりはお金を持ってらっしゃる方を対象に、株式などを通じた資産運用のお手伝いなどです。当時、大ヒットしたドラマ『愛という名のもとに』で証券会社に入った登場人物が仕事がつらくて不幸な出来事が起きるのですが、こんな話になるくらい、証券業界はつらい仕事とされていた時代でした。

 

その後、2001年に松井証券さんに移りました。大和証券時代はお客様の相手をする営業がメインだったのが、松井証券さんには株式売買委託手数料が完全自由化されたときには営業はもう一人もいなくて、ネットだけで注文を受ける会社でした。営業しかやってなかった人間が、営業のない会社に移ったわけです。

 

松井道夫社長には「ネット取引の仕組み自体が営業であり、優秀な営業がネット取引のツールである」という考えがありました。これは慧眼であり、先見の明があったと思います。入社に当たって「営業を否定している会社だから、営業しかしていない僕は不要なのでは」と尋ねたところ、「いや、逆に営業を否定しているからこそ、営業の経験が必要なんだ」ということをおっしゃっていました。

 

今で言うeコマースもまさにそうで、アマゾンが特許を取って多くの収益をもたらした「1ーClick」(あらかじめ支払い情報と住所を登録することで、ボタンをクリックするだけでショッピングカートの画面を経ずに購入できる機能)もいかに注文完了までのスピードを早めてボタンをクリックさせるか、ということに血道を上げていたわけです。松井社長は20年も前にその意味に気がついていたのでしょうね。

 

松井証券時代は顧客対応からマーケティングまで、ありとあらゆる部署を担当し、ZUUに移ったのが2015年です。最初が営業の会社、次が営業がなくてネットの取引自体が営業そのものだった会社、最後にいわゆるフィンテックの会社に、という変遷を考えると、日本の金融界がフィンテック化していく流れをずっと見てきたということになります。

 

ネット環境は欲望を何倍にも膨らませる

 

――大和証券に入社した頃にはすでにネットへの流れはあったと思います。人を相手にした営業をしながら、その流れをどのように見ていましたか

 

一村 当時はそうしたネットの動きに完全には気づいていませんでした。むしろ「株は難しいから、一般の人は営業員を通じて取引するだろう。ネットではまあ無理だよね」という気持ちでした。ネットが伸びているというのは話には聞いていましたが、当時はまだ個人の売買シェアのうち、ネットでのそれは10%もなかったのです。ゼロから10%というのは確かにすごい変化率ではあるのですが、これ以上は伸びないと思っていました。

 

ただ、営業員を前提とした大和証券さんも、現状のままではいつか限界がくるビジネスモデルだとは認識していました。というのも、僕が担当していた口座数は500件くらいあって、メインで取引をしていただいていたのは10〜20人分あるかないかくらいだったんですよ。当時はお客様とはメールでのやりとりはあんまりなくて、電話やファクスで対応していましたが、1人の営業員がフォローできるのはせいぜい数十人になります。これでは市場やマーケットが広がっていかないので、いずれは限界がくると。

 

そこで半信半疑でネット証券である松井証券さんに移ったんですが、入社した初日に想像と全然違うことにショックを受けました。それまでは僕が担当していた複数のお客様からいただく株の注文は、合計してもせいぜい1日に20〜30件くらい。ところが、松井証券さんのお客様は一人で200件も注文をしていたのです。ボリュームが10倍も違うことには大きな衝撃を受けました。なぜこんな違いが出てくるのかと考えたとき、それまでは人の「欲望」を計算に入れてなかったなと。これまで営業員を介してでなければ株の売買ができなかったのが、ネットで自由にやれるとなった途端にお客様の好きに注文ができるんです。この力はとても大きい、ということです。

 

たとえば新日鉄住金(当時は「新日本製鐵」)のような大型株の買い注文をストップ安の価格で指値を入れるなんてことは、営業員はしない。そんなことをしたら営業担当者に笑われるじゃないですか。でも、自分で自由に注文出していいんだったら、注文したい人はいるんですよ。それが人の気持ちじゃないですか。でもそれって突発的なことが起きて株価が変動した場合には、約定したりするわけですよ。そういうことをきっかけにしてどんどん注文数が膨らんでいくことから、やりたいことができるようになった途端にものすごい人が動いていく。こんな場面を嫌というほど見てきました。

 

たとえば会社更生法などで上場廃止になる会社は株価が1ケタになるのですが、そうなったら営業員はお客様に勧めることはできません。でも、ネットだったら自由にできてしまう。いいとか悪いとかではなく、自由な環境というのは、人の欲望を何倍にも膨らませるんです。大和証券さんにいた頃は、そういう変化に気づいてなかったですね。松井証券さんに移った後、世の中にものすごい変化が起こっていることが分かりました。

 

ユーザーインターフェースの改善に没頭

 

――ネット証券への移行で具体的にやったことは

 

一村 たとえば株価を見た後にすぐ押せる注文ボタンがあればいいとか、ほかにもここはこういう機能があったらいいとか、どんな些細なことでもいいからアイデアを出していきました。今で言ういろんなeコマースも含めて、UI(ユーザーインターフェース、利用者が接するモノや仕組み)やUX(ユーザーエクスペリエンス、利用者がサービスを利用したときに主観的に感じた体験)の改善に力を入れましたね。

 

特に、投資家の判断のためにどこまで情報を提供すべきかを考えました。というのも、情報というものは、多すぎると逆に情報の受け手からすると判断ができなくなってしまうんです。ですから、反対に選択肢を減らしてあげることが重要なんです。たとえば201円90銭など、銭単位で取引できる銀行株がありますが、株価は常に動いていますから、90銭、80銭、70銭、と動きますので、これでは逆に指値しにくくなっちゃう。その分ボラティリティーが少なくなる(商品の価格変動が小さくなる)のです。分かりやすい話として、自転車を買うときに色が10色あるのと、3色あるのでは3色の方が売上が大きくなったりするんです。

 

他にも取り扱い商品の拡大にも力を入れました。たとえば会社側が「流動性を高めたい」とか、「株主数を増やしたい」という理由で行う「立会外分売」という制度があります。その企業の大株主が所有する株式を、証券取引所の取引時間外(立会外)で売買する取引のことで、普通に市場で取引をするよりも、割引された価格で購入できることと手数料が無料なのが最大の特徴で、個人投資家に人気の商品です。

 

立会外分売は営業員泣かせの商品でした。通常の取引が午後3時に終わり、その株価を元にしてだいたい4時くらいに条件が決まり、翌朝の取引が始まる前の8時30分頃までに注文を受け付けるスケジュールとなります。当日の3時に取引が終わり、4時に値段が決まって、営業員もそこからお客様に連絡をして注文をいただく必要があります。翌日は8時30分までなので、営業活動はできないため、実質は当日の夕方の時間しかないわけです。だから事前にお客様に予約注文のおうかがいを立てて「値段が決まったらこちらで買いますね」みたいなことをしなければいけない、とても工数のかかる仕事でした。

 

ところがネットになった途端に夜中でも注文を受付することができるようになって、一気に人気商品になったりするわけですよ。なので、立会外分売を実施する企業自体が増えたんです。それは株取引のネット化によって購入する人が増えたからです。それまでは立会外分売は実施しても売れないから、立会外分売をする企業自体が少なかったんですけど、ネットになった途端に「こんなに投資家がいるのか!」と、立会外分売をする企業が増えていったんです。

 

(下)に続く

 

(取材・構成 不動産のリアル編集部)

 

 

■一村 明博 氏  株式会社ZUU取締役 FinTech推進支援担当
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事。その後、2001年に松井証券入社。2004年に同社営業推進部長、2006年には同社取締役に就任。高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。2015年、ZUUにジョインした。

 

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