不動産のリアルREALITY OF REAL ESTATE

  • 最終更新日:2018年8月13日
  • 公開日:2017年7月7日

『マイホーム価値革命』著者の牧野知弘氏に訊く(1) マイホームで稼ぐ――不動産の常識が変わる時代の資産防衛法

空き家問題やタワーマンション問題など、変わりゆく不動産と社会構造の関係について鋭く指摘してきた牧野知弘氏が6月、新著「マイホーム価値革命 2022年、『不動産』の常識が変わる」(NHK出版新書)を上梓されました。  

 

昭和型のライフプランが崩壊し、需要減少と供給増加で不動産マーケットが激変する時代、マイホームの資産価値をいかに高めるかについての卓見には高い評価が寄せられています。そんな牧野氏と不動産流通システム代表の深谷十三がこのほど、不動産業界の今後のあり方について対談した内容を2回にわたってお届けします。  

 

聞き手 深谷十三(株式会社不動産流通システム代表取締役)  

 

「マイホーム信仰」は高度経済成長期の産物

 

深谷 新著「マイホーム価値革命 2022年、『不動産』の常識が変わる」を読ませていただきました。今回は不動産仲介の現場にいる立場として、いろいろとご著書の内容についてお話をうかがい、今後の業務展開の参考にさせていただきたいと存じます。さて、ご著書のタイトルに「不動産の常識が変わる」とございます。これは、どういう常識が、どのように変わるとおっしゃるのでしょうか?  

 

牧野 不動産について日本人が「常識」としてきたことからお話しします。日本人はこれまでマイホームを持つことで「一国一城の主」になることを目指してきました。このほかにも「家を持って一人前」などとも言われ、男の目指すべきところとされてきました。これは「マイホーム信仰」と呼ぶべきものでした。  

 

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(オラガ総研株式会社 代表取締役 牧野知弘氏)  

 

高度経済成長期を経て、昭和から平成になっても、この概念は極めて強く日本を支配してきたように思います。この間、日本は世界でもまれに見る人口急増国で、増えた人口がみんな都市へ押し寄せるという状況でした。

 

ここからマイホーム信仰が生まれていきますが、誤解を恐れずに言えば、地方の人が作った考え方だと思います。というのは、江戸時代に遡るまでもなく、明治から戦前までの間の江戸っ子と呼ばれていた人たちは、ほとんどプロパティ(所有物)を持っていませんでした。そのことは、落語にも「長屋の借家住まい」という状況がよく語られることからも分かります。

 

それが地方から大量の人が入ることによって、大きく変わりました。地方の農家出身の人は、土地に対するこだわりが非常に強いです。土地をはじめとする不動産は「富の象徴」で、多く持てば持つほどそこから上がる収益を独り占めできたり、他人に貸して賃料を得ることができたりするからです。  

 

だから、地方から都市に流入した人たちが貯めたお金で「富の象徴」である自分の家を持ちたいと考えるのはごく自然な感情なんですね。ただ、都内で新たに家を持つことはほぼ不可能ですから、この需要に応えるように私鉄やJRが東京を真ん中にして放射状に線路を引き、沿線に住宅を作るというビジネスモデルを構築していったんです。

 

消費者はどんどん買いますし、人口の流入は続きますので、常に需要が供給を上回ることになります。結果、買った家は売って初めて利益になる「含み益」に過ぎないのですが、不動産の価値はどんどん上がっていきました。これを享受できる時代が長く続いたことが、日本人のマイホーム信仰を形成した理由だと思います。  

 

働き手減少、価値観変化で「常識」崩壊

 

深谷 このマイホーム信仰が変わっていくきっかけは、やはりバブル崩壊以降ということでしょうか?

 

 
牧野 はい、この価値観が大幅に変わるきっかけが、1995年からの3年間で日本社会が大転換したことにあります。95、96年を境に、さまざまな指標が悪い方に向かいます。分かりやすい例で言うと、生産年齢人口という15歳から64歳までの「働き手」と呼ばれている人の数が、この頃から減少に転じます。今でも毎年100万人は減っています。  

 

次に、ライフスタイルの大きな変化があります。今では共働きは当たり前ですが、これを大きく後押ししたのが男女雇用機会均等法(1985年制定)です。  

 

97年の一部改正により、それまで女性保護のために設けられていた女性の時間外と休日の勤務、深夜労働などの規制が撤廃されて、女性も本格的に社会に出られるようになりました。  

 

この頃から住宅会社のビジネスモデルが変化しました。昭和の頃のハウスメーカーやデベロッパーはたいてい家族4人、お母さんは専業主婦で、お父さんが一生懸命住宅ローンを払い、郊外にいつかは自分の城を持つという「住宅すごろく」を完成させていたんですが、これが使い物にならなくなります。そのうちに結婚しないとか、子供を持たないとかいう人が増えてきて、典型的な日本の昭和の家族像はますます壊れていきます。

 

また、全国で820万戸に及ぶ空き家問題ですが、実は全国でいちばん多いのは東京都です。その数は81万7000戸、首都圏では200万戸を超えます。当然、空き家にしないためには賃貸にしたり売却に回したりしないといけません。一方、東京への人口流入は増え方が小さくなり、2020年を境に減少に転じます。需要が減っていくのに供給が増えるという状況ですね。  

 

2022年、生産緑地制度終了で不動産供給過剰に

 

深谷 かつての需要超過が逆になってしまったと。  

 

牧野 供給過剰の状況をさらに後押ししてしまうと懸念されるのが、首都圏をはじめ都市圏における生産緑地法の「指定解除」です。生産緑地法は、大都市圏に住宅用地が足りなかった頃にできた法律で、市街化区域内における農地の宅地化を推進するため、指定された区域内の農地に対し宅地並みに高い固定資産税を課し、都市部にある農地を宅地化させることを促しました。  

 

その後、農地保全の観点から法律が改正され、1992年以降に市町村が指定した生産緑地地区内で農業をやる場合は、30年にわたって固定資産税が税率の安い農地の扱いとなり、相続税課税も猶予されたのです。この多くの期間満了が2022年に始まります。  

 

しかも、その広さは東京都だけで東京ディズニーリゾートの33個分になります。その頃にはもう農業を辞める人も多いでしょう。期間が満了すると、原則、自治体が買い取るわけですが、今の自治体の財政状況では困難です。

 

そうなると売却を急ぐことになるのですが、不動産マーケットに供給が増えるということは地価が下がることにつながります。逆の選択肢として、宅地並みの固定資産税をまかなうために、「土地の有効活用」として賃貸アパートなどを建てるオーナーも増えるでしょう。ということは、供給圧力がかかり値下がりとなります。  

 

深谷 そうなると、消費者にとって家はより持ちやすいものになりますね。  

 

牧野 そう、家はあってあたりまえのもの、すなわちコモディティになります。やがてネットでも簡単に買えるようになりますよ。そうなると、「財産」ではなくなるのです。この本の冒頭でも書きましたが、衣食住の「住」だけに資産性があると勘違いしていた日本人が、衣食住は全部消費だと考えた瞬間にマイホームに対する価値観は、大きく変わると思います。  

 

マイホームで稼いで資産防衛を

 

ただ、「マイホーム持つな」とか「家は買ってはいけない」と言いたいのではありません。「マイホームで商売しましょう」ということなんです。   つまり、ある時期までは子供と一緒に住んで、子供が独立するなどして住んでいる人の数が減ったら、空き部屋を民泊とかオフィスとかにするなど、時期によって用途をアレンジすればいいのです。こうするとマイホームが「稼ぐ」ようになります。  

 

また、こういう傾向が大勢を占めると、世の中に分譲マンションは増えません。なぜなら、管理規則で民泊はダメというところが多いですから、家で稼ぐという行為ができないからです。こうなると、マンションは借りて住むものだけになっていきます。  

 

それにしても、高額なタワーマンションを買って住んでいる人はこれから大変なことになるのではないでしょうか。もちろん節税のために2、3年で売り飛ばすことを考えて買った人もいるでしょう。しかし、やがて今と違って実需が崩れた世界になりますから。だから、「買って持ち続けたら価値が上がる」という昭和の物差しでもってタワーマンションを買うのは止めた方がいいですね。  

 

「ブティック型」が不動産業界を引っ張る

 

深谷 これからの不動産業界をリードするのはどういうところに目をつけた業者になりますか?

 

牧野 私は「ブティック型」の不動産業がこれから隆盛を極めるんじゃないかと思っています。著書の中では、「街中にたたずむブティックのような小規模な形態で、不動産事業に関する最低限の知見を持ちつつ、従来の不動産業とは異なるアイデアや価値観を操り、他業種との積極的な連携を行える人材の集合体とでもいうべき業態」と説明しています。

 

これまでの不動産業は、ただ住宅を作って売ればいいというものでした。大きく土地を買ってたくさん作って売り出せば、お客さんはいくらでもいるという時代でもありました。これからはそうではなくて、買う人がいない。

 

そこで、使わなくなった家はどうするのか、あるいは人が来なくなった地域をどうやって再生するのかなどの課題に対し、不動産会社はソフトウエアを提供するのです。目の前にある小さなビル、家、マンションの収益性を高めるためにいかに企画立案するか。こういったビジネスがこれからの不動産の中心になっていくと思います。

 

私がやっているのは、不動産事業プロデューサーとして事業を企画立案する会社ですが、目指しているのはまさにそこですよね。少人数ですが大きな仕事もしています。このオフィスも集まる人たちに不動産業者はあまりいなくて、いろんな業種の人が集まりますが、考えているのは不動産のこと。

 

不動産はステージに過ぎなくて、どうやって事業を組み立てて、土地の生かし方はどうすればいいかなど、いろんな知識を当てはめていって「無」から「有」をつくるという極めて面白いビジネスですよ。これまでのバックグラウンドと新たな知見で、不動産業に新たな領域を作りたいですね。   (次回に続く)  

 

■牧野知弘氏 オラガ総研株式会社代表取締役。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現:みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に入社。「コレド日本橋」「虎ノ門琴平タワー」など、数多くの不動産買収や開発、証券化業務を手がける。2015年にはオラガ総研株式会社を設立し、代表取締役に就任。ホテルやマンション、オフィスなど不動産全般のアドバイザリー業務を行う。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題』『民泊ビジネス』(祥伝社新書)、『老いる東京、甦る地方』(PHPビジネス新書)、『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)、『2020年マンション大崩壊』『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)などがある。テレビ、新聞などメディア出演も多数、精力的に行っている。    

 

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